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いまでも「スジ」はあるのだろうか・・・・②

この「So-net」のブログには「アクセス解析」がついていて、過去のどんな記事が読まれたか解析してくれる。
それによると、最近、異常に多かったのが、3月30日に書いた「いまでも『スジ』はあるのだろうか」という記事だった。
「意外」、と思うと同時に、「そうかもしれない」と思った。
こういう話は、競馬の表(おもて)に出たことのない、いわば「タブー」に当たることだからだ。

もう、時効になったと思われるので、書いてしまおう・・・・と思って書いたのだが、時効になっていなかったのだろうか。
というよりも、こうした事実を知らない方が多かったのではないか。
もう一度、わかりやすく「スジ」のことに触れてみたい。

「スジ=筋」とは、むかし、厩舎(うまや)ことは゛にあったもので、厩舎同士の師弟関係、厩舎と騎手の師弟・姻戚関係、騎手同士の師弟関係・・・・など、いわば、人脈を結ぶ「相関図」のことを、うまやことばで「スジ」と言った。
義理とか人情以上に強い絆で結ばれた、まさに「スジ」であって、こういう関係にある馬同士の1、2着はほとんどなかった。
(同じうまやことばで、同厩舎、同馬主の馬が1、2着することを「どんぶり」と言った)

むかしは、ほとんどの騎手が厩舎に所属していたので、たとえば、
A騎手はX厩舎所属だけれど、Y調教師の娘婿。B騎手は、X厩舎で、A騎手の弟分。
あるレースで、A騎手は義理の親であるY厩舎の馬で出走、B騎手が自分の所属するX厩舎の馬で出走する場合、どんなに人気になろうとも、この騎手(馬)同士の1、2着の組み合わせでは来ない。
これは、騎手の師弟関係だけでなく、厩舎の師弟関係も含まれる(どこかの厩舎の厩務員をやっていた人が、調教師として独立した・・・・などのケース)。

なぜ、スジ同士では1、2着しないのか。
馬主(およびその関係者)が、馬券を買っているからだ。
「スジ同士では1、2着しない」という暗黙の約束をつくっておけば、自分の馬が勝負をかけるとき、「スジ」に当たる馬券は買わなくてもいいから、点数が減る。
「スジ」に当たる馬が、人気であればあるほど、自信をもって切ることができるのだから、実に効率的でいい仕組みである。

たとえば、いまに当てはめて一番わかりやすい例をあげれば、藤沢和厩舎の馬にフリーの横山典弘が乗ってきて、それまでその馬に乗っていた藤沢厩舎の所属ジョッキーである北村が他の厩舎の馬に乗って同じレースに出てきたような場合である。
横山が「勝とう」というレースをするときに、北村も「勝とう」というレースをするのだろうか。

「スジ」とは、「表に出ない、秘密の、太い、情報ルート」だからで、Y厩舎の馬が勝負をかけ、A騎手が乗ることになると、その情報は、たちどころにB騎手やX調教師が知るところとなる(水曜日、木曜日の追い切りの後とか・・・・レース前日の騎手の調整ルームとか・・・・)。
BやXは、レースでは黙って4着以下で走ることになっているので、関係者は安心してこの組み合わせを切ることができる。
そういうことが、暗黙の了解のうちに、騎手同士、厩舎同士、騎手と厩舎同士で行われていた。

それは「八百長」ではないか、という方もいるかもしれない。
「八百長」とは、第三者が金銭で当事者を縛って「勝敗」を作ることで、この場合は、カネをもらってレースを作っているわけではないので「八百長」とは言えない(敢えて言えば「片八百長?」になるのだろうか)。
「人気になって走らなかった? それは、ファンの皆さんが人気にしただけであって、ここで走らせるか走らせないかは、われわれ(馬主側)の作戦のひとつ」などと言われたら、われわれには返す言葉もない。

現在は、ほとんどの騎手がフリーになって、いろいろな厩舎の馬にどんどん乗るようになっているし、厩舎の徒弟制度も薄れてきているので、「スジ」を成り立たせていた古い人間関係はなくなっているかもしれない。
だから、「スジ」などというものは、いまは存在しないだろう(と思う)。

日本の競馬は、西洋に範をとっているが、それは「制度」だけであって、内実は古く固い人間の絆によって培われた「うまや=厩舎」によって支えられてきた。
借りてきたシステムを、きっちり支えてきたのが、馬を出す側の「うまやとその人間関係」だったのだ。
「スジ」はなくなっても、それに類することはまだ「とてつもなく多く」残っている。
良くも悪くも、それがいまのJRAの競馬である。
「向こう側の視点」に立たないと、真の競馬の姿は見えてこないのではないだろうか。

内容が多少ダブりますが、2ヶ月前のエントリは以下。「番組表」のことにも触れています。
http://z-ba.blog.so-net.ne.jp/2011-03-30


*ひとつ、問題を出します。考えてみてください(この話は、スジとは関係ありません)。

クラシック路線を除くほとんどのレースは、ほんとうに馬を仕上げて「勝ち」に来るのは、実は、ほんの数頭です(ゴール前を見ていればわかります)。
ほとんどのレースのゴール前は、勝つべき馬と、その2着、3着となって馬券を構成する馬、およびそれに努力した馬など、数頭のしのぎあいです。

さて、中間の気配も上々で、「これなら勝てそう」と踏んで、A馬が勝負をかけることにしました。
当然、馬主とその関係者には情報が行き渡り、こぞって馬券を買うことになります。
レース前日、調整ルームに入った騎手が、それとなく騎手仲間に勝負レースのことを探ったところ、B馬、C馬も勝負をかけてきそうで、A馬がきっちりと勝てるかどうかわからなくなってしまいました。
馬券を買っている関係者に迷惑をかけそうです。
さて、このジョッキーは、どうするのでしょうか?
(ヒント:むかし、ある騎手が、新潟競馬場で本馬場に出てきた後で、4コーナーあたりで、レースの勝ち負けについて公言したために、懲戒処分を受けたことがありました)



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